専門職を「勝手に異動」はNG?―中小企業が今すぐ見直すべき配転のルール

「人が足りないから、ちょっと異動」…本当に大丈夫ですか?
「ちょっと現場が忙しいから、あの人に手伝ってもらおう」
「事務の人にも現場を兼務させれば、なんとか回るはず」
そんな柔軟な対応、実は会社にとって大きなリスクかもしれません。
令和6年4月、最高裁がある配転命令を「違法」と判断しました。
これは、大企業だけでなく、中小企業にも大きく関係する話です。
この記事では、
どんなときに「異動NG」になるのか?
企業として、どのように備えておけば安心なのか?
この2点を解説します。
実際にあった判例:「技術職の人を“事務職”に異動させたら違法に?」
まずは、判決の内容をかんたんに見てみましょう。
■社会福祉法人滋賀県社会福祉協議会事件 (最二小判令和6.4.26 労判1308号5頁)
▷ どんな事件だったのか?
福祉用具の開発などを担当していた技術職の社員(Xさん)。
ある日、会社から「事務職(来館者対応など)」への異動を命じられました。
本人の同意は、ありません。
異動後、体調を崩して休職。
一審・二審は会社側を支持しましたが、最高裁は違いました。
最終的に、「異動命令は無効」と判断されたのです。
▷ 最高裁が重視したポイントは?
「そもそも、技術職に限定する合意があった」
にもかかわらず、会社が一方的に事務職に配転したことが問題視されました。
つまり――
会社が勝手に職種を変えるのは、権限の乱用(=違法)だという判断です。
中小企業が気をつけたい3つのポイント
では、どんな場面で同じようなリスクがあるのでしょうか?
実務でとくに注意したいのは、次の3点です。
① 採用時の「職種・勤務地の範囲」を書面で伝えていますか?
令和6年4月から、労働基準法のルールが変わりました。
採用時には、以下の3つを必ず書面で説明する義務があります。
就業場所(どこで働くか)
業務の内容(何をするか)
変更の範囲(将来どこまで変わる可能性があるか)
たとえば――
「勤務地:つくば営業所」
「変更の範囲:会社の全支店」
このようにきちんと書いておかなければ、
あとになって「え?この場所限定じゃなかったの?」と社員に言われても、反論できません。
📌 Point:雇用契約書や労働条件通知書、今のままで大丈夫ですか?
② 専門職の人を異動させるときは、特に慎重に
看護師・エンジニア・デザイナーなどの専門職。
こうした職種で採用した人を、別の職種に異動させるのは、かなりデリケートな問題です。
次のような事情があると、「職種限定の合意があった」と判断されやすくなります。
採用時に「○○職限定」と記載している
入社から現在まで、同じ職種を継続している
過去に異動を拒否していた記録がある
この状態で、無理に異動させると……
配転トラブルや訴訟リスクに直結するおそれがあります。
③ 異動の前に、しっかり「対話」できていますか?
制度や規則を整えているだけでは不十分です。
実際に異動を命じる前に、
「本人がどんなキャリアを考えているか」「異動に納得しているか」
きちんと話し合っていますか?
形式的な通知だけで終わらせず、
希望の確認
納得できる説明
記録の保存
この3点を意識し、「合意形成」に努めることが、
信頼関係を壊さないための大切なステップになります。
おわりに:「ちょっとのつもり」が、大きなトラブルに
今回の判決は、こう語りかけてきます。
「よかれと思って」の配慮が、ルールを越えてしまうこともある――と。
中小企業では、少人数で回す都合上、異動や兼務は日常茶飯事かもしれません。
でも、今は時代が違います。
契約内容の明文化、社員との対話、ルールの整備。
この3つを見直さないと、気づかないうちにトラブルの火種を抱えているかもしれません。
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