固定残業代があるから安心? ――「制度があるだけ」では守れません。リスクを回避するための実践チェック

その「安心感」、本当に根拠がありますか?
「うちは固定残業代を給与に含めているから、残業代の問題は大丈夫」
――そうおっしゃる経営者の方は少なくありません。
しかし、制度があっても正しく運用されていなければ、それは“無効”と判断される可能性があります。
実際、制度に不備があったことで数百万円単位の未払い残業代を請求された事例も多く、中小企業にとっては経営を揺るがすリスクになりかねません。
今回は、固定残業代制度を安心して使い続けるために「今すぐ見直すべきポイント」と「具体的な対応策」について、社労士の視点からご紹介します。
要チェック! 固定残業代が無効とされる典型パターン
① 対象時間の記載がない
「残業代込み」というだけでは不十分です。
「月30時間分の残業を含む」など、具体的な時間数の記載がなければ無効と判断される可能性があります。
② 金額の内訳が曖昧
基本給と固定残業代が混ざったままではNG。
給与明細では「基本給いくら」「固定残業代いくら」と明確に区分する必要があります。
③ 割増率のルール無視
法定の割増率に基づいた設計が必要です。
時間外労働:25%以上
深夜労働(22時〜5時):25%以上
休日労働:35%以上
これらを無視して「まとめて○万円」と一括支給する設計では、制度が無効となるリスクがあります。
意外と見落としがちなポイント:深夜・休日労働の扱い
たとえば「月30時間分の固定残業代」としていても、
その中に深夜(22時~5時)や休日労働が含まれていたら要注意。
これらは別途での支給が必要となり、含める場合でも明確な時間帯や割増率に基づいた算出根拠の明示が欠かせません。
実務でよくある整理パターン
時間外30時間分(25%割増)を固定で支給
深夜・休日分は別枠で定額 or 実績支給
雇用契約書・就業規則に明記
給与明細でも内訳を明示
固定残業代に深夜・休日を含める場合は、割増率を明示した計算式を契約書に記載するのが安心です。
運用面のチェックも不可欠
設計だけで満足していませんか?
実際には以下の点も日常的に確認しておく必要があります。
想定時間(例:30時間)を超えていないか?
給与明細の表記が曖昧になっていないか?
実労働時間との乖離が常態化していないか?
担当者が制度を正しく理解しているか?
見逃すと…ここまで影響が広がります
固定残業代の不備が原因で、以下のような損害が実際に発生しています。
未払い残業代の遡及支払い(2025年6月現在、未払い残業代は過去3年分まで遡って請求される可能性があります。なお、将来的には時効が5年に延長される見込みのため、長期的な未整備はより大きなリスクを招く可能性があります。(労基法第115条)。
例:月5万円 × 36ヶ月 × 3名 = 540万円
付加金(制裁金)の支払い命令
未払い額と同額の追加負担が生じる可能性も訴訟・労働審判への対応コスト
弁護士費用・対応工数・信用失墜リスク採用力・企業イメージの低下
SNSや口コミでの拡散により長期的ダメージも
社労士だからこそできる「実践的サポート」
制度設計から書類整備、運用チェック、社員説明まで。
私たち社会保険労務士は、以下のような実務支援をご提供します。
- ✅ 雇用契約書や就業規則のリーガルチェック
- ✅ 固定残業代制度の再設計・見直し
- ✅ 実態に合った労働時間管理の構築
まとめ:制度は「安心材料」にも「リスク要因」にもなる
正しく運用すれば、固定残業代制度は労使双方にとってメリットのある仕組みです。
しかし誤った設計・運用は、企業にとって大きな負債にもなりかねません。
「本当にうちの制度は大丈夫?」
そう思った今が、見直す最適なタイミングです。
お問い合わせ・無料相談はこちらから
固定残業代制度のチェックをご希望の方は、下記よりお気軽にご相談ください。
✅ お問い合わせフォーム
✅ 雇用契約書・給与明細の簡易診断も受付中